2010年8月3日火曜日

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:懲戒権

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日は、使用者の懲戒権についてです。不払いの残業代などの労務問題に関連するテーマです。

最高裁は、夜に従業員の社宅に会社を誹謗するビラを配布した従業員に対して懲戒として譴責を課したことは有効であると判断しました。以下、判決文の引用です。

労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種制裁罰である懲戒を課することができるものであるところ、右企業秩序は、通常、労働者の職場内又は職務遂行に関係のある行為を規制することにより維持しうるのであるが、職場外でされた職務遂行に関係のない労働者の行為であっても、企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係を有するものもあるのであるから、使用者は、企業秩序の維持確保のために、そのような行為をも規制の対象とし、これを理由として労働者に懲戒を課することも許されるのであり(最高裁昭和四五年(オ)第一一九六号同四九年二月二八日第一小法廷判決・民集二八巻一号六六頁参照)、右のような場合を除き、労働者は、その職場外における職務遂行に関係のない行為について、使用者による規制を受けるべきいわれはないものと解するのが相当である。
 これを本件についてみるのに、右ビラの内容が大部分事実に基づかず、又は事実を誇張歪曲して被上告会社を非難攻撃し、全体としてこれを中傷誹謗するものであり、右ビラの配布により労働者の会社に対する不信感を醸成して企業秩序を乱し、又はそのおそれがあったものとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができないではなく、その過程に所論の違法があるものとすることはできない。そして、原審の右認定判断に基づき、上に述べ来ったところに照らせば、上告人による本件ビラの配布は、就業時間外に職場外である被上告会社の従業員社宅において職務遂行に関係なく行なわれたものではあるが、前記就業規則所定の懲戒事由にあたると解することができ、これを理由として上告人に対して懲戒として譴責を課したことは懲戒権に認められる裁量権の範囲を超えるものとは認められない。


会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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