2010年2月2日火曜日

法律顧問・顧問弁護士が扱うテーマ:労働協約の不利益変更

顧問弁護士(法律顧問)としてよく受ける問いについてまとめていきます。

今回のテーマは、労働協約の不利益変更問題です。

労働協約の不利益変更問題というのは、労使が従前の労働条件を不利益に変更する内容の労働協約を締結したときに、その協約の規範的効力が労働者に及ぶのか、という問題です。

この点について、朝日火災海上保険事件(上告人は、昭和28年に被上告会社の従業員となり、労働協約締結時、満53歳で組合員であったが、変更後の協約が適用されると57歳で雇用関係が終了し、退職金の支給基準率が下がることから、上告人は、満65歳定年制を前提とする労働契約上の地位と退職金の支払を受ける権利を有することの確認を求めた事案)で、最高裁は、以下のように判断しました。

本件労働協約は、上告人の定年及び退職金算定方法を不利益に変更するものであり、昭和五三年度から昭和六一年度までの間に昇給があることを考慮しても、これにより上告人が受ける不利益は決して小さいものではないが、同協約が締結されるに至った以上の経緯、当時の被上告会社の経営状態、同協約に定められた基準の全体としての合理性に照らせば、同協約が特定の又は一部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結されたものとはいえず、その規範的効力を否定すべき理由はない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。本件労働協約に定める基準が上告人の労働条件を不利益に変更するものであることの一事をもってその規範的効力を否定することはできないし(最高裁平成五年(オ)第六五〇号同八年三月二六日第三小法廷判決・民集五〇巻四号一〇〇八頁参照)、また、上告人の個別の同意又は組合に対する授権がない限り、その規範的効力を認めることができないものと解することもできない。

これらについて、ご不明な点がありましたら、顧問弁護士(法律顧問)にお問い合わせください。

また、労働者の方で、法律問題でお悩みの方も、弁護士にご相談ください。


なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代の請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず法律の専門家(顧問弁護士など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

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