2010年11月26日金曜日

複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する交通事故

複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する交通事故の考え方についての判例です。複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである。これに反し、各加害者と被害者との関係ごとにその間の過失の割合に応じて相対的に過失相殺をすることは、被害者が共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとすることによって被害者保護を図ろうとする民法719条の趣旨に反することになる。以上説示したところによれば、被上告会社及び上告人は、Cの損害581万1400円につきCの絶対的過失割合である6分の1による過失相殺をした後の484万2833円(円未満切捨て。以下同じ。)の限度で不真正連帯責任を負担する。このうち、被上告会社の負担部分は5分の4に当たる387万4266円であり、上告人の負担部分は5分の1に当たる96万8566円である。被上告会社に代わりCに対し損害賠償として474万7654円を支払った被上告組合は、上告人に対し、被上告会社の負担部分を超える87万3388円の求償権を代位取得したというべきである。なお、自賠責保険金は、被保険者の損害賠償債務の負担による損害をてん補するものであるから、共同不法行為者間の求償関係においては、被保険者の負担部分に充当されるべきである。したがって、自賠責保険金120万円は、被上告組合が支払った被上告会社の負担部分に充当される。そうすると、論旨はこの限度で理由があり、これと異なる原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
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2010年8月3日火曜日

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:懲戒権

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日は、使用者の懲戒権についてです。不払いの残業代などの労務問題に関連するテーマです。

最高裁は、夜に従業員の社宅に会社を誹謗するビラを配布した従業員に対して懲戒として譴責を課したことは有効であると判断しました。以下、判決文の引用です。

労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種制裁罰である懲戒を課することができるものであるところ、右企業秩序は、通常、労働者の職場内又は職務遂行に関係のある行為を規制することにより維持しうるのであるが、職場外でされた職務遂行に関係のない労働者の行為であっても、企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係を有するものもあるのであるから、使用者は、企業秩序の維持確保のために、そのような行為をも規制の対象とし、これを理由として労働者に懲戒を課することも許されるのであり(最高裁昭和四五年(オ)第一一九六号同四九年二月二八日第一小法廷判決・民集二八巻一号六六頁参照)、右のような場合を除き、労働者は、その職場外における職務遂行に関係のない行為について、使用者による規制を受けるべきいわれはないものと解するのが相当である。
 これを本件についてみるのに、右ビラの内容が大部分事実に基づかず、又は事実を誇張歪曲して被上告会社を非難攻撃し、全体としてこれを中傷誹謗するものであり、右ビラの配布により労働者の会社に対する不信感を醸成して企業秩序を乱し、又はそのおそれがあったものとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができないではなく、その過程に所論の違法があるものとすることはできない。そして、原審の右認定判断に基づき、上に述べ来ったところに照らせば、上告人による本件ビラの配布は、就業時間外に職場外である被上告会社の従業員社宅において職務遂行に関係なく行なわれたものではあるが、前記就業規則所定の懲戒事由にあたると解することができ、これを理由として上告人に対して懲戒として譴責を課したことは懲戒権に認められる裁量権の範囲を超えるものとは認められない。


会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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2010年7月30日金曜日

滅失の事実がないのにされた建物滅失の登記の効力

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日は、滅失の事実がないのにされた建物滅失の登記の効力についてです。

この点について、最高裁は、以下のとおり判断しました(判決文の引用)。

登記された甲建物について、滅失の事実がないのにその旨の登記がされて登記用紙が閉鎖された場合には、甲建物に設定され、その旨の登記を経由していた根抵当権が登記簿上公示されないこととなるから,右滅失の登記は根抵当権に対する妨害となっているといわなければならない。そして、更に右建物につき別の乙建物として表示の登記及び所有権保存登記がされている場合には、直ちに右滅失の登記の抹消登記の申請をしても、その抹消登記によって甲建物の表示の登記及び所有権保存登記が回復すれば、それらの登記と乙建物としてされた表示の登記及び所有権保存登記とが併存することとなっていわゆる二重登記となるため、右の申請は却下されることとなるのであるから、乙建物の表示の登記及び所有権保存登記も、根抵当権に対する妨害となっているということができる。したがって、登記された甲建物について、滅失の事実がないのにその旨の登記がされて登記用紙が閉鎖された結果、甲建物に設定されていた根抵当権設定登記が登記簿上公示されないこととなり、更に右建物につき別の乙建物として表示の登記及び所有権保存登記がされている場合には、根抵当権者は、根抵当権に基づく妨害排除請求として、乙建物の所有名義人に対し、乙建物の表示の登記及び所有権保存登記の抹消登記手続を、甲建物の所有名義人であった者に対し、甲建物の滅失の登記の抹消登記手続をそれぞれ請求することができるものというベきである。



会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代未払い問題、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

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2010年6月2日水曜日

法律顧問・顧問弁護士が扱うテーマ:吸収分割

顧問弁護士・法律顧問が扱うテーマをメモ的にまとめています。

今日のテーマは、会社分割における債権者異議手続です。

会社分割には、分割により新規に設立する会社に、分割する会社の事業や権利義務の全部または一部を承継させる「新設分割」と、既存の会社に、分割する会社の事業や権利義務の全部または一部を承継させる「吸収分割」の2つがあります。

そして、分割の対価としての株式の割当先が、「分割する会社の場合」は分社型分割、分割の対価としての株式の割当先が「分割する会社の株主の場合」を分割型分割といいます。

吸収分割においては、間違えやすいのですが、分社型分割の場合には、債権者が分割会社に請求することができる限り、債権者異議手続は不要ということです。

しかし、分割型分割の場合は、債権者異議手続が必要です。

これは、以下の債権者異議ができる債権者を規定した条文上明確です。

吸収分割後吸収分割株式会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として吸収分割承継会社と連帯して負担する保証債務の履行を含む。)を請求することができない吸収分割株式会社の債権者(第七百五十八条第八号又は第七百六十条第七号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、吸収分割株式会社の債権者)

ここに、「第七百五十八条第八号又は第七百六十条第七号に掲げる事項についての定めがある場合」というのが、分割型分割のことです。

この条文の趣旨は、分社型分割の場合は、分割に際して、分割される事業資産に相当する対価が支払われていると考えられるからです。

そして、相当の対価が支払われず、会社が損害を被った場合には、取締役の第三者責任による損害回復しかありません。なお、詐害行為取消権によって、債権者が保護されると考える見解もあります。

ご不明な点がありましたら、顧問弁護士(法律顧問)までお問い合わせください。

そのほか、法律問題でお悩みの方も、弁護士にご相談ください。



なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、御社におかれましても顧問弁護士を検討することをお勧めします

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2010年5月13日木曜日

顧問弁護士として問われた質問(法改正情報)

顧問弁護士としてよく質問される、最近施行された新しい労働基準のポイントをまとめてみます。

長時間労働を抑えるとともに、労働者の健康を確保し、ワークライフバランスが取れた社会を実現するために、4月1日に改正労働基準法が施行されました。

新しい労働基準法では、残業代の計算の方法が大きく変わりました。

従来は、時間外労働に対する賃金報酬の割増率は、時間数とは無関係に、一律25%でしたが、改正後は、60時間を超えた分については50%に引き上げられます。(なお、休日労働や深夜労働については従来と同じであり、それぞれ35%、25%の割増率のまま変更されません。)

また、一部の残業代を有給休暇として取得できる制度も新たに設けられます(ただ、当面は、一定の従業員、資本金規模の企業に勤める従業員のみに適用されます。中小企業に関しては、現状は猶予期間とされ、3年後に改めて導入が検討されることになっています。)。

代替休暇制度は、従業員規模にかかわらず適用されます。

以前は、日単位で取得せねばならなかった年次有給休暇を、事業所において労使協定が締結されることを条件に、時間単位で1年に5日分を限度として取得できるようになるのです。

これまで、連休としてまとめて休暇が取りづらく、有給休暇を消化できなかった労働者にとっては、より柔軟な休暇の取り方が可能となります。

その他、改正法では、努力義務として、すべての企業に対して、時間外労働の限度基準である1カ月45時間を超えた残業代の割増賃金率を25%以上にすること、および、月45時間以上の時間外労働を短縮することについての義務が課せられます。

不明な点は、貴社の顧問弁護士にお問い合わせください。

サービス残業、残業代の未払いでお悩みの方、弁護士に相談してみてはどうでしょうか。

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2010年4月4日日曜日

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマ:親会社による子会社解散と労働関係

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマをまとめています。

今回は、親会社による子会社解散と労働関係についてです。

親会社による子会社解散と労働関係について、大阪高裁(第一交通産業事件。タクシー事業を営むA社の従業員であった1審原告らが、同社の解散及びそれを理由とする1審原告組合員である1審原告らの解雇は、同社の親会社である1審被告B社が1審原告組合を壊滅させる目的で行った不当労働行為であるなどと主張して、B社に対し、主位的に、法人格否認の法理に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求める等した事案)で以下のように判断しました。

 法人とは名ばかりであって子会社が親会社の営業の一部門にすぎないような場合,すなわち,株式の所有関係,役員派遣,営業財産の所有関係,専属的取引関係などを通じて親会社が子会社を支配し,両者間で業務や財産が継続的に混同され,その事業が実質上同一であると評価できる場合には,子会社の法人格は完全に形骸化しているということができ,この場合における子会社の解散は,親会社の一営業部門の閉鎖にすぎないと評価することができる。
 したがって,子会社の法人格が完全に形骸化している場合,子会社の従業員は,解散を理由として解雇の意思表示を受けたとしても,これによって労働者としての地位を失うことはなく,直接親会社に対して,継続的,包括的な雇用契約上の権利を主張することができると解すべきである。
 また,子会社の法人格が完全に形骸化しているとまではいえない場合であっても,親会社が,子会社の法人格を意のままに道具として実質的・現実的に支配し(支配の要件),その支配力を利用することによって,子会社に存する労働組合を壊滅させる等の違法,不当な目的を達するため(目的の要件),その手段として子会社を解散したなど,法人格が違法に濫用されその濫用の程度が顕著かつ明白であると認められる場合には,子会社の従業員は,直接親会社に対して,雇用契約上の権利を主張することができるというべきである。


会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、貴社の顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論のみ理解しても、問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い残業代不払い、サービス残業などの労務問題は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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2010年3月18日木曜日

残業代請求、サービス残業などの解決手続:労働審判

残業代の問題(不払い、未払い)、サービス残業問題の解決手続として、労働審判があります。今日は労働審判について整理します。

まず、労働者または使用者(労働者であることが多い)が裁判所に対して申立てをすることで手続が始まります。第一回期日は申立後40日以内に指定されるため、答弁書や証拠書類(陳述書など)は、第1回期日の1週間くらい前が提出期限となることが通常です。

第一回期日の前には、労働審判委員らが、提出された書類を確認します。

第一回期日には、争点の整理をして、関係者の尋問が行われます。

第二回期日(第一回期日後、1か月以内に指定)においては、労働審判委員がその心証に基づいて調停をする可能性を探るために、当事者双方から聞き取りをし、当事者に対して調停案が示され、次回までに双方が合意が成立するか検討します(場合によっては、第一回期日の段階で合意に向けた調整が始まるケースもあります)。

第三回期日までの間に合意が可能であれば調停が成立し、ここで手続は終了となります。この合意は、裁判上の和解と同様の効力が認められ、終局的な解決となります。強制執行も可能です。

調停における合意が困難な場合には、労働審判委員会は審判をします。

審判に不服がある場合には、2週間以内に異議申立を行えば、通常の訴訟に移行します。

上記の異議申し立てがなければ審判内容が確定し、確定判決と同様の効果が生じます。

労働審判のポイントですが、期日が三回に限られている以上、第一回期日が重要となります。よって、労働審判の申立を起こされた場合は、早急に的確な答弁書を作成する必要があります。また、証拠書類の提出も原則として第二回期日までに提出する必要があります。

三回までしか期日がないため、第一回期日の段階で、的確な書証を整え、関係者を同行させるなどして、万全の準備をする必要があるのです。これは結構大変です。

そして、労働審判は、多くの場合、労働者が申立て、会社側が相手方となりますが、上記のとおり、短時間で的確な反論をする必要がありますので、申立をされた場合には、早急に顧問弁護士に問い合わせることをお勧めします。最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。


労働者側にとっても、労働審判は、訴訟に比べてスピーディーな解決が可能ですので、利用を検討する際には、弁護士に相談してみると良いと思います。

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2010年2月2日火曜日

法律顧問・顧問弁護士が扱うテーマ:労働協約の不利益変更

顧問弁護士(法律顧問)としてよく受ける問いについてまとめていきます。

今回のテーマは、労働協約の不利益変更問題です。

労働協約の不利益変更問題というのは、労使が従前の労働条件を不利益に変更する内容の労働協約を締結したときに、その協約の規範的効力が労働者に及ぶのか、という問題です。

この点について、朝日火災海上保険事件(上告人は、昭和28年に被上告会社の従業員となり、労働協約締結時、満53歳で組合員であったが、変更後の協約が適用されると57歳で雇用関係が終了し、退職金の支給基準率が下がることから、上告人は、満65歳定年制を前提とする労働契約上の地位と退職金の支払を受ける権利を有することの確認を求めた事案)で、最高裁は、以下のように判断しました。

本件労働協約は、上告人の定年及び退職金算定方法を不利益に変更するものであり、昭和五三年度から昭和六一年度までの間に昇給があることを考慮しても、これにより上告人が受ける不利益は決して小さいものではないが、同協約が締結されるに至った以上の経緯、当時の被上告会社の経営状態、同協約に定められた基準の全体としての合理性に照らせば、同協約が特定の又は一部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結されたものとはいえず、その規範的効力を否定すべき理由はない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。本件労働協約に定める基準が上告人の労働条件を不利益に変更するものであることの一事をもってその規範的効力を否定することはできないし(最高裁平成五年(オ)第六五〇号同八年三月二六日第三小法廷判決・民集五〇巻四号一〇〇八頁参照)、また、上告人の個別の同意又は組合に対する授権がない限り、その規範的効力を認めることができないものと解することもできない。

これらについて、ご不明な点がありましたら、顧問弁護士(法律顧問)にお問い合わせください。

また、労働者の方で、法律問題でお悩みの方も、弁護士にご相談ください。


なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代の請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず法律の専門家(顧問弁護士など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

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2010年1月25日月曜日

顧問弁護士(法律顧問)がよく聞かれるテーマ:科料と過料

顧問弁護士(法律顧問)がよく聞かれるテーマをまとめています。

今回は、科料と過料についてです。


「科料」と「過料」は、いずれも「かりょう」と読みますが、両者を区別する意味で、「科料」は「とがりょう」、「過料」は「あやまちりょう」とも読みます。一般に、「科料」は「刑事罰」、「過料」は「秩序罰」といわれています。


まず「科料」は、刑罰の一種で、広い意味の罰金の一種です。罰金と科料との相違は、金額の相違です。罰金は1万円以上であり(減軽して1万円未満になることもあります)、科料は、1万円未満です(1000円未満にはなりません)。比較的軽い罪の罰則ということになります。ただ、納付しなければ、罰金と同様、「労役場留置」として、刑務所に収監されて、支払い終わるまで働かなければなりません。なお、罰金とは財産刑の一種であり、行為者から強制的に金銭を取り上げる刑罰です。


 刑法上では、公然わいせつ、わいせつな文書・図画の頒布・販売・公然陳列、侮辱、遺失物等横領、器物損壊などのうち、犯情の軽いものなどが科料となりえますし、条例で定められている科料もあります。


 次に、「過料」は、大きく分けて「秩序罰としての過料」「執行罰としての過料」「懲戒罰としての過料」があります。

 「秩序罰としての過料」というのは、民事上、民事訴訟上の義務違反に対するもの、行政上の義務違反に対するもの、地方公共団体の条例・規則違反に対するものがあります。
 
 「執行罰としての過料」は、規定はありますが、実際には機能していません。

 「懲戒罰としての過料」は、規律維持のため、義務違反に対し制裁を科すことをいいます。最近では、裁判員制度において裁判員(又は裁判員候補者)の虚偽記載や出頭義務違反等に科される過料も、懲戒罰としての過料に当たるといわれていますし、路上喫煙防止条例の過料も、これに含まれるといわれています。

 過料は、犯罪ではなく、「前科」になりませんし、科料と違って、労役場留置はありません。しかし、多額の過料を科せられることもあります。



ご不明な点は、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。

また、法律問題でお悩みがある方も、気軽に弁護士にご相談ください。



なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代の未払い、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

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