2010年4月4日日曜日

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマ:親会社による子会社解散と労働関係

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマをまとめています。

今回は、親会社による子会社解散と労働関係についてです。

親会社による子会社解散と労働関係について、大阪高裁(第一交通産業事件。タクシー事業を営むA社の従業員であった1審原告らが、同社の解散及びそれを理由とする1審原告組合員である1審原告らの解雇は、同社の親会社である1審被告B社が1審原告組合を壊滅させる目的で行った不当労働行為であるなどと主張して、B社に対し、主位的に、法人格否認の法理に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求める等した事案)で以下のように判断しました。

 法人とは名ばかりであって子会社が親会社の営業の一部門にすぎないような場合,すなわち,株式の所有関係,役員派遣,営業財産の所有関係,専属的取引関係などを通じて親会社が子会社を支配し,両者間で業務や財産が継続的に混同され,その事業が実質上同一であると評価できる場合には,子会社の法人格は完全に形骸化しているということができ,この場合における子会社の解散は,親会社の一営業部門の閉鎖にすぎないと評価することができる。
 したがって,子会社の法人格が完全に形骸化している場合,子会社の従業員は,解散を理由として解雇の意思表示を受けたとしても,これによって労働者としての地位を失うことはなく,直接親会社に対して,継続的,包括的な雇用契約上の権利を主張することができると解すべきである。
 また,子会社の法人格が完全に形骸化しているとまではいえない場合であっても,親会社が,子会社の法人格を意のままに道具として実質的・現実的に支配し(支配の要件),その支配力を利用することによって,子会社に存する労働組合を壊滅させる等の違法,不当な目的を達するため(目的の要件),その手段として子会社を解散したなど,法人格が違法に濫用されその濫用の程度が顕著かつ明白であると認められる場合には,子会社の従業員は,直接親会社に対して,雇用契約上の権利を主張することができるというべきである。


会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、貴社の顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論のみ理解しても、問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い残業代不払い、サービス残業などの労務問題は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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